健康経営と睡眠:生産性向上やメンタルヘルス対策へ

健康経営への関心が集まる中、日々のパフォーマンスに直結する「睡眠」が、多くの企業で注目が高まっています。企業の持続的な成長を考える上で、このテーマは避けては通れません。
では、睡眠がなぜ健康経営において重要なのか、具体的なデータを交えて解説していきます。
睡眠不足は「見えない損失」を生む:免疫力低下とパフォーマンスの著しい低下
従業員の「寝不足」は、組織にとって想像以上の「見えない損失」につながります。
1. 免疫力低下で、社員の体調悪化リスクが上昇

たとえば睡眠不足は、免疫力を著しく低下させることが知られています。
このグラフは、参加者を睡眠時間ごとにグループ分けし、点鼻薬の容器のようなものを使用して鼻から風邪ウイルスを吹きかけるという方法で、風邪の発症率を調べた実験の結果です。
同じように風邪のウイルスにさらされても、睡眠時間が5時間未満の人と、7時間以上眠る人の間には、風邪の発症率に2倍以上の差がありました。睡眠が免疫機能に深く関わっていることが示唆されています。
関連記事:S’UIMINコラム
感染症対策、睡眠が最強!?寝不足だと風邪をひきやすい
2. パフォーマンス低下は「自覚なし」に進行する
働き盛りのビジネスパーソンは特に「自分は短時間睡眠でも大丈夫」と考えがちです。
しかし、睡眠不足は知らず知らずのうちに、私たちのパフォーマンスを著しく低下させます。
たとえばある研究では、4時間睡眠を7日時間、あるいは6時間睡眠を11日間続けると、認知機能のテスト結果が徹夜明けとほぼ同じレベルまで低下することが示されています(グラフ左側)。
さらに厄介なのは、この睡眠不足によるパフォーマンス低下を、本人が自覚しにくいことです。

右側のグラフは、4時間睡眠や6時間睡眠を毎日続けたときに感じる眠気の変化を表しています。
テスト期間が6日間をすぎるくらいから、眠気にはほとんど変化がないまま、左側のグラフで示された脳のパフォーマンスだけが低下し続けていることが読み取れます。
従業員が知らずに低いパフォーマンスで業務を続けているとすれば、それは企業にとって計り知れない損失につながると言えるでしょう。
プレゼンティーズムとメンタルヘルス:睡眠の質が企業活動に与える直接的な影響
ここまで睡眠と「風邪の引きやすさ」や「脳のパフォーマンス」の関係を見てきましたが、これらはいずれも組織の生産性に大きくかかわるものです。
また、出勤はしているものの心身の不調で生産性が落ちる「プレゼンティーズム」の指標と睡眠の関係を、より直接的に調査した研究もあります。
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)と株式会社ポケモンが共同で、睡眠ゲームアプリPokémon Sleepのユーザー約8万人を対象に、ゲームで取得された睡眠データとプレゼンティーズムの関係を調べた大規模調査です。
見過ごせない経済損失「ソーシャルジェットラグ」
調査の結果、睡眠の時間帯が不規則なグループ(ソーシャルジェットラグ群)と、寝付きが悪く中途覚醒が多いグループは、健康的な睡眠が取れているグループと比べ、プレゼンティーズムが3%近く悪化していることが分かりました。
ソーシャルジェットラグ群の2.96%のパフォーマンスの低下は、日本の平均年収 461万円(国税庁発表)の人であれば13.6万円の損失に相当します。
これは、まさに「睡眠」が企業の経済活動に直接影響を及ぼすことを示しています。
睡眠はメンタルヘルスの「入り口」になる
睡眠はメンタルヘルスとも密接に関係しています。
睡眠不足はストレス耐性を低下させ、不安やイライラといったネガティブな感情を引き起こしやすくなります。また、精神的なストレスが「眠ろうとしても眠れない」という不眠につながることもあります。

さらに、メンタルヘルス対策に取り組んでいる組織から、次のような課題を聞くことも少なくありません。
・ストレスチェックは実施しているが、具体的な対策が考えづらい
・ストレスチェックだと、メンタルの問題を隠すための回答をされてしまう
・メンタルの問題はデリケートで、踏み込んだ話がしづらい
こうした中で、たとえば睡眠の検査をメンタルリスクの評価に活用したり、睡眠改善施策によってメンタルの回復を図ったりすることは考えられないでしょうか。
睡眠改善の施策を導入した企業担当者からの声
実際に、睡眠改善施策を取り入れた企業の方から、次のような声をいただきました。
・「最近よく眠れていますか?」と声をかけやすく、相手も自然に答えてくれることが多い
・そこから話が深まり、メンタル不調の兆しに気づけたケースもあった
・「メンタルは大丈夫?」とは聞きにくいため、睡眠からのアプローチが効果的だと感じた
・食事や運動のように時間をかけて変化するものと違い、睡眠は翌日のパフォーマンスにすぐ影響するため、効果を実感しやすい
睡眠はこのように、デリケートなメンタルヘルスの問題にアプローチする「入り口」や、即効性のある生産性向上へのツールとなり得るのです。
関連記事:S’UIMINコラム
社員の健康意識を高める第一歩に。睡眠を「見える化」する企業の新たな取り組み(日本システム技術株式会社様 導入事例)
「睡眠健康経営」で生産性を高め、企業の未来を創る
さて、具体的にはどのような睡眠関連の施策が、健康経営において考えられるでしょうか。多くの場合は、「睡眠への意識・リテラシーの向上」と「実際の睡眠課題の発見・解決」を両輪で進める必要があります。
意識だけを高めても、実際の課題に気づかなければ対策はできません。逆に、いくら改善を促しても、睡眠を大切にしようという意識が低ければ、成果は得られにくいものです。
前者の「意識・リテラシーの向上」には、科学的根拠に基づいたセミナーなどが有効です。後者の「課題の発見」には、質問票によるセルフチェックや睡眠測定デバイスの活用が考えられます。セミナーや質問票によるチェックを組織全体への「ポピュレーションアプローチ」、睡眠測定を活用した個別施策を「ハイリスク者への対応」と位置づけることもできるでしょう。
また、睡眠の問題は、身近な人による継続的なフォローも重要になります。そのため、組織の中に「従業員の睡眠課題の解決をサポートできる人材」を育成することも有効です。
課題には、個人の行動変容が必要なものもあれば、専門的な治療が必要なものもあります。
課題の種類 | 対応策 |
睡眠不足:睡眠時間が十分に確保できない | 睡眠時間を確保する。睡眠の重要性や適正睡眠時間についての意識変容が必要なことも。 |
不眠症:眠ろうとしても眠れない | 眠れない要因を分析し、就寝前の習慣を見直すなどの対策をとる。主観的に眠れていないと感じていても、客観的にはよく眠れていることもある。 |
睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が止まったり弱くなったりする | 減量や就寝姿勢の工夫で改善することもあるが、中等症以上では医学的な検査や治療が重要となる。 |
睡眠の問題は、身近な人による継続的なフォローも重要です。そのため、組織内に「従業員の睡眠課題を解決できる人材」を育成することも有効な手段となります。
睡眠の問題は多様なため、組織の状況や目的に応じて、複数の施策を組み合わせて取り組むと良いでしょう。
睡眠は、従業員の生産性、創造性、メンタルヘルスを支え、ひいてはエンゲージメントや離職率にまで影響を及ぼす、企業にとって極めて重要な「人的資本」の要素です。
科学的知見に基づいた「睡眠」を主軸とする健康経営によって、組織全体のウェルネスを高めていきましょう。
【S’UIMINの健康経営サービス】
https://www.suimin.co.jp/health-manage


SOMNO+利用者事例 睡眠時間は確保できているはずなのになぜか満足できない。そんなときに知ってほしい自分に合った見直し方
睡眠時間はしっかり確保できているのに、熟睡感がないと感じていたBさんの事例をご紹介します。体感だけでは気づきにくい夜間の状態をデータで客観的に捉えることで、納得して次の一歩を踏み出せるようになった見直し方のプロセスを見ていきましょう。

SOMNO+利用者事例 疲れているのに眠れない。そんなとき、睡眠だけを責めなくていい理由
寝つきの悪さや朝の疲れに悩んでいたCさんの事例をご紹介します。仕事や食事、光の環境といった日々の生活習慣をデータとともに整理することで、無理に「頑張って眠ろう」としなくても、眠りやすい条件を一つずつ見つけていったプロセスを見ていきましょう。

SOMNO+利用者事例 ちゃんと眠れているはずなのに朝がつらい。そんなときに知ってほしい、睡眠の「質」以外を見直すヒント
睡眠の質が悪いから朝がつらいのだと思い込んでいたDさんの事例をご紹介します。データを通して睡眠のバランスを客観的に確認することで、質よりも「量とリズム」という新たな見直しの糸口を見つけるまでのプロセスを見ていきましょう。
睡眠について、さらに詳しく知りたい方へ
S’UIMINでは、医療・健診、健康経営、商品・サービス開発、研究支援など、
さまざまな立場に応じたサービスや取り組みをご用意しています。
S’UIMINの事業一覧を見る
keyboard_arrow_right



