春眠暁を覚えず!? 「春によく眠れる」は本当?その理由は?
「春眠暁を覚えず」と言いますが、春は本当によく眠れる季節なのでしょうか。朝寝坊をしたり、いくらでも眠れると感じたりするのは、別の原因かもしれません。

「春眠暁を覚えず」は、春の朝に目覚めにくくなる現象を表す言葉として知られています。
春になると心地よく眠れて、つい寝坊してしまう――そう考えられることが多いですが、本当にそれだけでしょうか。
春の朝に起きづらくなる理由を整理してみましょう。
「春眠 暁を覚えず」とは?
「春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えず」とは、中国の唐の時代の詩人、孟浩然(もうこうねん)が作った「春暁(しゅんぎょう)」という漢詩の一節に由来します。
「春暁」 孟浩然 作
春眠不覚暁(しゅんみんあかつきをおぼえず)
処処啼鳥を聞く(しょしょていちょうをきく)
夜来風雨の声(やらいふううのこえ)
花落つること知る多少ぞ(はなおつることしるたしょうぞ)
この漢詩を現代語に訳すと、以下のような具合でしょうか。
▼「春暁」の現代語訳
春に眠っていると、夜が明けたことに気づかなかった。
小鳥があちらこちらでさえずっている。
昨夜は風や雨の音が聞こえた。
どれくらいの花が散ってしまっただろうか。
「春眠暁を覚えず」は元々、春の情景や感情を詠んだ漢詩の一節であり、どうやら春の睡眠だけを表現しているわけではないようです。
春になると、よく眠れるのはなぜ?
さて、仮に「春によく眠れる」のだとすれば、どのような理由なのか。考えられる可能性を整理してみます。
1)冬の寝室環境が寒すぎた
冬は特に明け方に冷え込みやすく、寒さで目が覚めやすくなります。
この場合、春は冷え込みが和らぐため、冬よりも目覚めにくくなる可能性があるでしょう。
心当たりがあれば、冬の寝室環境を見直してみましょう。次の冬や寒の戻りの時期に、寝具や暖房の工夫で寒い時期にもよく眠れるようになるかもしれません。

2)睡眠不足
「春だからよく眠れる」と思いがちですが、実際には慢性的な睡眠不足が影響している可能性があります。
睡眠不足が続くと、休日に長時間眠ってしまいがちです。たとえば、平日に十分な睡眠を取れていないと、週末に身体が睡眠を補おうとし、起きる時間が遅くなります。
この場合は「春だから」というより「春も」が正確ですが、長く眠ってしまった時に「春だから」と思いたくなる気持ちは理解できるものです。

3)花粉症の薬の影響
春にぐっすり眠れる理由の一つに、花粉症の薬の影響が考えられます。
抗ヒスタミン薬には眠気を引き起こす成分が含まれるものがあり、副作用として「眠気」が報告されています。
花粉症の薬を服用している方で、春だけ特に眠くなると感じている場合、その眠気に困っているようであれば、医師や薬剤師に薬について相談してみましょう。
4)睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時間が長くなっている場合、睡眠の質が低下している可能性もあります。
たとえば、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の影響で睡眠中に何度も呼吸が止まり、記憶に残らないような短い覚醒を何度も繰り返している場合、睡眠の質が大幅に悪化しているため、通常より長く眠ってしまうことがあります。
特に春は、花粉症によって鼻が詰まったり、喉が腫れたりして睡眠時無呼吸が悪化しやすい季節。大きないびきなどに心当たりがあれば、睡眠の質を一度見直してみるのもよいかもしれません。

そもそも、春は本当によく眠れるのか?
さて、そもそも「春だからよく眠れる」というのは、本当なのでしょうか。
科学的な観点で「誤解である」という可能性についても整理してみます。
1)夜明けが早くなっただけで、春によく眠れるわけではない
冬は夜明けが遅く、朝6時ごろの東京はまだ真っ暗。しかし春になると、同じ6時でもすでに日が昇っています。日の出の正確な時刻には地域差がありますが、冬と春で1時間前後の差があることは、日本も中国も大差ありません。
すると、毎朝同じ時刻に目を覚ましたとしても、春は冬と異なり「夜がすでに明けていた」となります。
孟浩然の「春眠不覚暁」も、明確に「気持ちよく眠れる」と詠まれているわけではありません。「早くなった夜明け」や「鳥のさえずり」や「風雨に散ったであろう花」に春という季節の巡りを感じている、と解釈することもできます。
2)大規模な調査で「冬の方が起床時刻が遅い」という結果が出ている
現代においては、睡眠センサー等を活用して日本人の睡眠の季節変化を大規模に調査した研究もあります。
結果は、「起床時刻が最も遅く、睡眠時間が最も長くなるのは冬である」「春は、秋よりも起床時刻が遅くなるものの、冬よりは遅くならない」というものであり、「春が冬よりもよく眠れる」とは異なるものでした。
参考:睡眠覚醒サイクルの変動要因とその特徴 ~「春眠暁を覚えず」の疫学~
まとめ:「春眠暁を覚えず」を言い訳にしないで
現代社会で「春眠暁を覚えず」は、朝寝坊や居眠りを正当化する言葉として使われることが多いように感じます。
もちろん、ぐっすりと気持ちよく眠れることはとても良いことです。
しかし、休日に長く眠れたり、日中に居眠りをしてしまったりする場合には、睡眠不足や睡眠時無呼吸などの問題が現れている可能性を考える必要もあります。
「春にやたらとよく眠れる」と感じることがあれば是非、ご自身の睡眠を見つめ直すきっかけにしてください。
文責:谷 明洋 (S'UIMIN 睡眠ウェルネスアドバイザー / 元日本科学未来館 科学コミュニケーター)
監修:柳沢 正史(S'UIMIN 取締役会長 / 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長)

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