寒い冬によい睡眠をとるために ~空調・寝具からトイレ、朝起きられない対策まで~


寒い冬にもより良い睡眠をとるためには、どんな工夫やコツがあるのでしょうか。空調・寝具の調節や、夜中のトイレをどうするか、また、冬こそ大切にしたい光との付き合い方など、今晩からできる対策をまとめます。


室温20~22℃・湿度40~60%、直風NG

寝室の室温は20~22℃が目安になります。「16℃以上」としている資料ものもありますが、18℃を下回ると寒いと感じる方が増えていきます。

注意したいのは、エアコンの設定温度があまりアテにならないこと。同じ温度に設定しても寝室の断熱性能や外気温等によって室温が変わる可能性があるのですです。快適な寝室の環境をつくるためには、温湿度計を使って実際の環境をチェックしてみましょう。

また、エアコンの風が直接顔に当たらないように配置や風向きを工夫し、湿度を40〜60%ほどに整えることも忘れずに。直風や乾燥は喉の炎症や咳の要因となり、結果として目が覚めやすくなったり、風邪を引きやすくなったりしてしまいます。

暖房寝具は「温度差」に注意

電熱マットレスや電気毛布などの暖房寝具は、良い睡眠のために必要な体からの放熱を妨げる可能性があります。冷え切った寝具を温めたいときには便利ですが、あまり強くし過ぎないように、できれば就寝時にはスイッチをオフにするのが良いでしょう。寝具を温めたいのであれば、就寝の30分程度前から掛布団をめくった状態で寝室に暖房を入れておくのも一案です。

また、体の一部だけを温め続けてしまうことにも注意が必要です。たとえば、マットレスに面している背中だけが温かくてお腹側が寒かったりすると、寝返りの回数が増えたり、不快感で目が覚める要因にもなります。夏に暑いからと下着だけで、あるいは掛布団なしで眠るのをお勧めできないのも同様の理由です。

「布団の中は温かいのに、布団から外に出ている顔の周りは寒い」という状況では、冷たい空気によって喉が刺激されてしまいます。こたつで眠ってしまうのも、同様の理由で勧められません。暖房寝具に頼りすぎるのではなく、空調等を併用して、体の周りの環境に温度差が出ないようにしましょう。

入浴は60~90分前に

入浴は就寝の60~90分前を目安に、ゆっくりと体の芯まで温めると良いでしょう。深部体温が一度上がり、そのあと下がっていくときに自然な眠気が出やすくなるためです。逆に、体が温まっている間はなかなか入眠することが難しくなるので、どうしても就寝直前に入浴する必要がある場合は軽めのシャワーですませると良いでしょう。

これらは冬に限らず有効な方法ですが、冬場は入浴前後の急な温度差でめまいや失神をおこす「ヒートショック」のリスクもあるので、脱衣所や浴室を温かくすることも忘れずに。

冷えを感じるときに、靴下をはいて眠ることを考える方もいらっしゃるかもしれませんが、靴下は体からの放熱を妨げる一因になります。どうしても足が冷えるという方は、足首までのレッグウォーマー等、放熱を妨げないアイテムも検討してください。


トイレは我慢し過ぎない

冬は汗をかきにくい分、就寝中にトイレへ行きたくなりやすい季節です。ここで、寒くて布団から出たくないからといってトイレを我慢すると、何度も繰り返しやってくる尿意が覚醒の刺激になり、眠りが浅くなることがあります。尿意を感じたら、さっとトイレにいって、再び眠った方がぐっすり眠れることが多いものです。

トイレまわりの温度や明るさも整えよう

また、廊下やトイレの冷たさ、眩しさも脳を覚醒させてしまいます。寝室からトイレまでの温度差を小さくし、廊下やトイレの照明が明るすぎないかもチェックしましょう。光源が直接見えないような間接照明や足元灯を活用できれば理想的です。

トイレに行きたくなりやすい冬は、トイレ周りの環境を見直す機会でもあります。環境が整えば、覚醒への刺激もトイレに行くのが億劫になる気持ちも減り、トイレのあとに再びよく眠ることにつながっていくでしょう。

冬は睡眠時無呼吸にも注意

冬は睡眠時無呼吸症候群にも注意が必要です。風邪や花粉症のほか、寒暖差などで鼻粘膜の血管が過剰反応して引き起こされる「血管運動性鼻炎」などで鼻詰まりになりやすく、いびきや睡眠時無呼吸が表面化、重症化しやすくなるためです。

睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気だけでなく、心血管障害のリスクも高めます。強いいびきや、目が覚めた時の喉の強い乾燥、夜間の頻尿等に心当たりがある場合は、早めに睡眠検査を検討してください。


冬は朝の光を意識的に浴びよう

冬に睡眠の質が下がったり、うまく眠れなくなったりする要因の一つに、昼間の時間が短いため、体内時計をうまくリセットできなくなることが挙げられます。

たとえば、「冬は特に、朝起きるのが辛い」というケースでは、「朝の太陽光を十分浴びられず、体内時計が後ろ倒しになっている」という可能性が考えられ、特に夜型になりやすい20歳前後の若年層でよく見られます。

対策として、午前中のなるべく早い時間に、意図的に屋外の景色を眺めたり、短時間でも外に出て光を浴びたりすることが考えられます。朝の光で体内時計を前へ進めるイメージです。

早くに目が覚めてしまう場合は夜を明るく過ごす

一方で冬は日没も早いため、夕方から早く眠くなる人もいます。結果として睡眠時間が延びれば良いことですが、特に注意したいのは、早くに眠ってしまうことであまりに朝早くに目が覚めてしまうケース。朝型の傾向が強い高齢者でしばし見られ、冬は夜明けも遅いので、早すぎる目覚めを特に悩ましく感じます。

対策としては就寝時刻が早くなり過ぎないようにすること。夕食後に何か予定などを入れて活動的に過ごし、少し遅くまで起きているようにしましょう。起床したい時刻と自分に必要な睡眠時間から就寝時刻を逆算すると良いでしょう。

昼間が短くなることで、より夜型になる方も、より朝型になる方もいるというのは少し不思議に思えますが、体内時計を太陽光で調整できるチャンスが少なくなると考えると整理がしやすいかもしれません。


何より大切な「量」の確保

そして何より大切なのは、しっかり睡眠時間を確保することです。ここまでの対策を取り入れてより深く眠れるようにしても、十分な睡眠時間が確保できていなければ、十分な効果は得られません。

冬は風邪などの感染症が流行りやすく、受験シーズンでもあります。たとえば、同じように風邪のウイルスにさらされた時に実際に風邪を引く人の割合が、睡眠不足の人とそうでない人で大きく異なるという実験結果があります。また、睡眠不足は考える力や判断の速さにも影響して、大切な試験で本来の力を発揮できなくなってしまいます。。

対策としては、とにかく眠るための時間をしっかりと確保すること。そのうえで、これまでに紹介してきた対策を組み合わせなら、より多くの時間をぐっすりと眠りましょう。


まとめ

冬は「寒さ」に「短い昼」の影響が重なり、眠りの深さや目覚めの調子に揺らぎが出やすい季節です。まずは眠るための時間を十分に確保すること。そのうえで、確保した時間をぐっすり眠れるように、空調や寝具、トイレまわりの環境を上手に整えたり、光の浴び方を工夫したりするなどの対策を考えてみてください。

体調を崩しやすく、大切な時期だからこそ、睡眠を味方につけて健康に過ごしていきましょう。

参考文献・出典

室内環境(室温・湿度)
WHO. Housing and Health Guidelines. 世界保健機関, 2018.
ASHRAE. ANSI/ASHRAE Standard 55-2020: Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy. 2020/2021.

光と体内時計
CIE. CIE S 026/E:2018 — CIE System for Metrology of Optical Radiation for ipRGC-Influenced Responses to Light. 2018.
Brown TM, Brainard GC, Cajochen C, et al. Recommendations for indoor light exposure to support physiology, sleep, and health in healthy adults. PLOS Biology, 2022. DOI: 10.1371/journal.pbio.3001571

睡眠の「量」とパフォーマンス/感染症
Van Dongen HPA, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF. The cumulative cost of additional wakefulness. Sleep, 2003.
Prather AA, Janicki-Deverts D, Hall MH, Cohen S. Behaviorally assessed sleep and susceptibility to the common cold. Sleep, 2015. DOI: 10.5665/sleep.4968

文責:谷 明洋 (S'UIMIN 睡眠ウェルネスアドバイザー / 元日本科学未来館 科学コミュニケーター)
監修:柳沢 正史(S'UIMIN 取締役会長 / 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長)

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