睡眠「観点別の評価」の評価方法と根拠 〜睡眠評価レポート3〜 

睡眠不足、不眠、睡眠の質、睡眠中の呼吸の状態、など6つの観点でおこなう「観点別の評価」について、評価方法や医科学的な根拠を説明します。

この記事では、睡眠評価レポートの「観点別の評価」について、その評価方法や医科学的な根拠を整理します。

S'UIMINの睡眠計測サービス(InSomnograf=インソムノグラフ)のレポート紹介の詳細記事3です。

睡眠を6つの観点で評価

観点別の評価は、脳波を測定して得られたデータと睡眠アンケートの回答を元に、睡眠を次の6つの観点で評価します。

1, 睡眠時間、睡眠不足

2, 寝付けない、目が覚めて眠れない

3, 生活リズム、概日リズム障害

4, 眠っている間の睡眠の質

5, 睡眠時無呼吸症候群の疑い

6, その他の睡眠障害の疑い

実際の臨床に近い考え方で、医療機関の受診を検討すべき睡眠トラブルや、より良い睡眠を取るための睡眠衛生指導で重視すべきポイントを明確にする狙いであり、診断を意図するものではありません。

いずれの評価も、睡眠の専門家が総合的な判断としておこなっています。

睡眠変数の評価の根拠となる文献

観点別の評価では、脳波を測定して得られた睡眠変数(睡眠時間、寝付き、中途覚醒、最も深い睡眠(N3)の量、レム睡眠の割合など)を、年代別の段階評価に当てはめて点数化し、それぞれの項目評価の材料としています。

年代別の段階評価の基準値は、健常者の睡眠変数について年代別のメタアナリシスをおこなった下記の文献に基づいて決定しています。

Boulos MI, Jairam T, Kendzerska T, Im J, Mekhael A, Murray BJ. Normal polysomnography parameters in healthy adults: a systematic review and meta-analysis. Lancet Respir Med. 2019;7(6):533–543.

各観点の評価方法

続いて、6つの観点ごとに、項目の趣旨と評価方法を説明します。

1, 睡眠時間、睡眠不足

毎日の睡眠時間が十分に足りているかを、計測された睡眠時間(眠った時間)や睡眠質問票の回答から総合的に評価します。

計測された睡眠時間を年代別の基準値に当てはめたうえで、適切な睡眠時間に個人差があることを踏まえ、休日等の長時間睡眠や、日中の眠気、寝起きの辛さなども加味して評価します。

不眠や睡眠障害の影響で睡眠時間(眠った時間)が短くなっている場合、この項目の評価も下がりますが、コメント等で該当する不眠や睡眠障害に言及し、そちらを改善するよう勧めます。

● 評価のおもな要素

  • 睡眠時間(計測)

  • 休日などの長時間睡眠(計測)

  • 休日などの長時間睡眠(質問票)

  • 眠気の自覚(質問票)

  • 寝起きの辛さ(質問票)

睡眠の質が良いものの、睡眠不足が疑われる睡眠経過図の例

2, 寝付けない、目が覚めて眠れない

不眠の有無や程度を、客観的な計測結果から評価します。

不眠には、なかなか寝つくことができない入眠困難や、夜中に目が覚めて眠れなくなってしまう中途覚醒などがあり、その発生頻度や継続時間などをおもな評価材料としています。

脳波計測のデータに基づいて不眠の有無や程度を評価するため、本人の主観に基づく「不眠症」の診断とは性質が異なりますが、「不眠」の実態を客観的に把握することにより、対応策を考える材料となります。

【一般的な不眠症の診断】
「不眠の有無や程度」と「それによる日中の影響」についての、本人の主観を元に診断する

【本サービスにおける不眠の評価】
本人の主観も考慮するが、基本的には客観的な計測による「不眠の有無や程度」によって評価する

● 評価のおもな要素

  • 寝付き、中途覚醒(計測)

  • 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒の自覚(質問票)

不眠が目立つ睡眠経過図の例

3, 生活リズム

生活のために望ましい時間帯に、規則正しく眠ることができているかを総合的に評価します。

就寝時刻の遅れや、睡眠の時間帯と睡眠時間の晩後の変化をおもな評価材料としています。

希望する時間に眠ることができるかについての睡眠質問票の回答や、入眠困難の有無を加味して、体内時計の乱れを評価し、顕著な乱れが考えられる場合は概日リズム障害の存在を疑います。

● 評価のおもな要素

  • 睡眠中央時刻の経日変化(計測)

  • 睡眠時間の経日変化(計測)

  • 希望する就寝時刻(質問票)と入眠時刻(計測)

  • 寝起きの辛さ(質問票)

睡眠中央時刻や睡眠時間が不規則な例

4, 眠っている間の睡眠の質

眠れている時間の睡眠の質を、脳波計測の結果から総合的に評価します。

最も深い睡眠(N3)の量、レム睡眠の割合、ごく短時間の覚醒の頻度などから算出する睡眠の安定度を、おもな評価材料としています。

睡眠の質が著しく悪い場合は、熟眠障害の存在や、睡眠時無呼吸などの影響を考える疑う材料とします。

● 評価のおもな要素

  • 最も深い睡眠の量(計測)

  • レム睡眠の割合(計測)

  • 睡眠の安定度(計測)

最も深い睡眠(N3)が少なく、睡眠段階の遷移頻度が高い睡眠の例

5, 睡眠時無呼吸症候群の疑い

睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群の疑い」を評価します。

指輪型のデバイスで測定した「血中酸素ウェルネス」のデータを、既存の睡眠医学の睡眠時無呼吸のスクリーニングに準じた基準で評価します。

また、同時に計測した睡眠の質に顕著な悪化が認められる場合や、いびきや呼吸停止についての本人の自覚が明確な場合などは、リスクの大きさを上方修正することがあります。

最終的には次のような目安を意図し、やや広めに(リスクを大きめに)評価しています。

対応が必要 = 睡眠時無呼吸の中等症とされる「AHI=15以上」に該当する可能性が一定以上ある

注意が必要 = 睡眠時無呼吸の軽症とされる「AHI=5以上」に該当する可能性が一定以上ある

● 評価のおもな要素

  • 血中酸素ウェルネス3%低下回数/時(計測)

  • いびきや呼吸停止の自覚(質問票)

  • 日中の極端な眠気(質問票)

睡眠段階の遷移頻度が特に高い睡眠経過図の例

6, その他の睡眠障害の疑い

その他の睡眠トラブルのリスクを網羅的に評価します。

具体的には、四肢の不快感や動かしたい衝動が入眠を妨げる「むずむず脚症候群」や、夢の内容に反応して現実で身体を激しく動かす「レム睡眠行動障害」、日中に発作的な過度の眠気が生じる「過眠症(ナルコレプシー等)」などが疑われる場合に注意を促します。

睡眠脳波に所見が現れにくい睡眠トラブルは、主に睡眠質問票の回答に基づいて評価したうえで、セルフチェックやより詳しい検査を勧めることがあります。

● 評価のおもな要素

  • 睡眠段階の遷移頻度(計測)

  • 各睡眠トラブルに関連する所見の自覚(質問票)

補足情報

診断を意図するものではありません

観点別の評価は、脳波計測と睡眠質問票で得られた情報をもとに、S'UIMINの顧問医が総合的に評価しています。

脳波計測と睡眠質問票の内容についての見解で、それぞれの睡眠トラブルについての確定的な診断ではありません。

睡眠トラブルを有していても検査で明確な所見が十分に認められない「偽陰性」や、当該睡眠トラブル以外の原因によって関連する所見が認められる「偽陽性」の可能性があることをご了承ください。

また、評価するにあたり十分な睡眠脳波や質問票の回答が得られない場合は、一部またはすべての項目の判定がされないことがあります。

睡眠トラブル間の因果関係について

6項目の観点(睡眠トラブル)は、相互に影響しあうことがあります。

具体的な例として、「睡眠時無呼吸」の影響によって、「睡眠の質」が低下するとともに、「不眠」が誘発され、結果として「睡眠時間」が短くなるケースなどが考えられます。

このような場合、根本的な要因となっている「睡眠時無呼吸の改善」を優先すべきであり、「睡眠時間を確保する」などの改善策は本質的ではありません。

本レポートでの睡眠の観点別の評価は原則として、6項目をそれぞれ独立して評価するため、関係するすべての項目でリスクが高く評価されますが、優先度の高い課題を中心に言及していきます。

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